技法私の技法は、そのテクニック、材料、道具すべてにおいて、浮世絵の時代からの伝統的なものと近代的なものを両方使います。伝統的な道具や材料にはそれぞれ、時代を経て磨かれた存在自体の美しさがあり、それらを使う喜びもひとしおですが、後継者の問題が深刻な現代では、手に入れることがむづかしいことが多く、また高価です。近代的な 材料・道具類は手に入れ易く、使用方法が簡単なものが多く、浮世絵の時代の彫り師や刷り師のような高度な技術を持たない現代作家の助けにもなっています。 ワークショップでのデモンストレーション動画 >>Video 1, Video 2 1. 原図作り最初にトレーシングペーパーに鉛筆で下絵をおこします。色ごとの版が必要なため、その素になる原図です。どのように色版を分けるか考えながら細部まで描き込みます。 | | |
2. 色版分解作品の画面サイズに切った6ミリ厚のシナベニヤ(中が五層になったもの)を色版の数だけ用意し、それぞれ色別 にカーボン紙でトレースします。隣り合っていなければ、2色の違う色を同じ版の上にトレースすることもできます。注意する点は、版と作品が左右逆になるように、トレーシングペーパーの裏側からトレースすることです。 | ||
3. 彫り色版の彫りは丸刀、三角刀、切り出し、等の彫刻刀やカッターナイフを使います。使う度に砥石でよく研いで手入れします。電動工具のトリマー(ルーター)も短時間で余分な部分を彫るのに便利です。だいたい彫り終わったらラフな表面をサンドペーパーで整えます。 主版は木目を出して暗くする部分と、クリアラッカーを何度も塗り重ねてつやを出し、インクをはじくようにして明るくする部分に分けます。最後に黒の線の部分をV 字型の彫刻刀で彫っていきます。 | ||
4. 紙の用意和紙は洋紙に比べるとその繊維が長くからみ合っているので、水や圧力に強く、紙としての寿命も長いです。同じサイズに切った和紙を霧吹きで湿らせ、同じように湿らせたブローティングペーパーではさんで重ね、ビニールクロスで包んで湿気を保つようにした上で板にはさんで上から重しをのせ、5、6時間、または一晩置きます。 | ||
5. 色版刷り (凸版)版は事前によく水をふくませておき、インクはポスターカラーやガッシュなど水性のものを使います。版画用のハケは、版の上のインクを平均化し余分なインクや小さなゴミを取り除くすぐれたものです。竹の皮でつくられた伝統的なバレンと、板に挟まれたたくさんのボールベアリングが自由に動く近代的なバレンは、それぞれに持ち味があり、刷りの効果によって使いわけます。版の右手前角をL字型の見当のカギに合わせ、一版ごとにずれないように刷っていきます。 | ||
6. 主版刷り(凹版)主版も事前によく水をふくませておき、アクリル絵具の黒にリターダーメディウム(乾燥を遅らせるもの)を少量まぜたものを小形のスキージやハケで、版全体につめるように置きます。版全体にいきわたったら版より長いスキージで一気にインクを拭き取り、まだ湿り気のある和紙にバレンで刷ります。この時もL字型見当を使いずれないように刷ります。 | ||
7. 乾燥刷り上がった作品は平らな面に並べて乾燥させます。その時に、作品にシワが入るのを防ぐために和紙の四隅を紙テープでとめて乾燥させます。 |